第150回 国会 参議院本会議 代表質問  9月26日(火) 

○議長(斎藤十朗君) 鴻池祥肇君。
   〔鴻池祥肇君登壇、拍手〕


○鴻池祥肇君

 私は、森総理の所信表明演説に対し、自由民主党・保守党を代表して質問をさせていただきます。
 まず冒頭に、九月十日からの秋雨前線の豪雨によってお亡くなりになられました方々に心よりお悔やみを申し上げ、被害に遭われました皆様、また、大規模な火砕流のおそれがあるために御家族がばらばらで避難を余儀なくされておられる三宅島島民の皆様に心からお見舞いを申し上げるものであります。
 島民の皆さん、必ず家族そろって島に帰れる日が参ります。どうか希望を持って、我慢をして頑張っていただきたいと思います。
 私は、死者6432名を出した阪神・淡路大震災の兵庫県選出の議員として、頻繁に最近起こっております災害発生の報に接するにつけ心が痛みます。あの日の人々の絶望的な叫び声と広がる炎を、その中で人と人との温かい助け合いを今も思い起こさずにはいられないのであります。
 あれから五年半、神戸を初めとして、県民が苦しみや悲しみを乗り越えて、美しい六甲山を仰ぎ見ながら、港も町もようやく復旧して、淡路島ではいわゆる花博、ジャパンフローラ2000を成功させるなど、今や未来に向けて力強く歩み始めているところであります。
 ここに改めて、今日までの政府及び国民の皆様方の御心配や御高配に心から御礼を申し上げる次第であります。そして、被災者住宅再建支援制度というあの大災害の教訓から学びました自然災害の多発する日本列島にとって極めて大切な提案に御理解と御支援をお願い申し上げたいのであります。
 この日本列島に自然災害が起き続けております。総理、今後の被害に遭われた方々への生活支援、災害の復興対策、さらに今後の災害の拡大防止や地域への経済援助など、どのように取り組まれるのか、お伺いしたいと思います。また、兵庫県発の被災者住宅支援制度についても御所見をお伺いしたいと思います。
 さて、サッカーの緒戦勝利から始まりましたオリンピックも、今や大変な盛り上がりであります。
 柔道のヤワラちゃんこと田村選手の快挙に始まり、野村、瀧本と金メダルが続きました。そして、9月21日には井上康生選手が亡き母の遺影とともに金メダル。一昨日はマラソンの高橋尚子選手がすばらしい金メダル。日の丸・君が代に、目標をなし遂げた選手たちの目に美しいものが光りました。
 よく頑張った。おめでとう。そして、感動をありがとう。残念ながら健闘むなしく敗退した選手諸君にも、すばらしいドラマを演じてくれましたことに心から拍手を送りたいと思うのであります。
 めちゃ悔しい、金が欲しかった、水泳の田島寧子選手のさわやかな笑顔もすてきでありました。きょうは女子ソフトボールであります。頑張れ日本、国民こぞって応援をしております。
 10月1日の閉会式まで選手諸君の御健闘を祈り、世界じゅうに友人の輪を広げての帰国をお待ちしております。
 それにしても、日の丸・君が代に反対された皆様方、このオリンピックをどのような気持ちでごらんになっておられたか、機会がありましたら承りたいと思うところであります。
 さて、オリンピックはさておいて、全国の町や村の広場で、また体育館では、強くて正しい節度ある青少年の育成、これはスポーツにありと、土曜、日曜、休日を返上してそれぞれのスポーツの指導に当たる人々はこの国に何万人とおられるわけであります。少年野球、少年サッカー等々に、日々スポーツに熱中する少年たちは何百万人といるのであります。
 私も地元ではウエートリフティングの会長として、あるいは少年野球や少年剣道のお世話役をしているものでありますけれども、思うに、現場では育成のための施設が少な過ぎます。そのための予算も本当に少ないのです。それぞれがわずかの浄財を出し合ってのつつましやかな運営をしております。
 今回、兵庫県からオリンピック、ウエートリフティングに菊妻選手を送り出しました。そのときの壮行会で、参加者三千円の会費で壮行会を開き、残ったものをシドニーへの出発のせんべつにしたのであります。それは極めてささやかなものでありました。
 総理の言われる教育には、特に体育が必要であります。スポーツの育成にぜひとも力を入れていただきたい。それを強くお願いを申しながら、ラグビーの選手として活躍されたスポーツマン総理に、今行われているオリンピックに対する御所見、今後のスポーツ振興に対してのお考えをお聞きしたいと思います。
 さて、オリンピックの開会式では、韓国と北朝鮮の両国選手団が統一旗のもとで、ともに手を握り合って、手を高く差し上げて万雷の拍手で迎えられました。遠くて近い国と言われる韓半島の人々に、日本はどのように今後の外交を進めようとするのか、あの入場行進を見て、私は正直戸惑いを感じたのであります。
 歴史的な南北の首脳会談、その後の南北対話の進展から、北朝鮮の姿勢に変化が見えるとの歓迎ムードの高まっている中で、今かなり大規模な米の追加支援が検討されております。熱海市において金大中大統領との首脳会談の話題にもなったと存じますが、しかし国家としての基本にかかわる拉致疑惑の問題にめどがつくどころか、全く実質的な進展がない状態を考えると、米の追加支援については国民の理解は決して得られないと思うのであります。
 総理は、9月12日、被害者の家族と会われました。日朝国交正常化交渉に当たって拉致問題が棚上げになるのではないか、家族の質問に対して、総理は、それはありません、これは大切な問題であり、無視したり棚上げして国交を結ぶことはありませんと述べられたと聞いております。拉致問題に関してこのように一歩踏み込んだ形で御決意を示されたことに、私は心から敬意を表するものであります。
 国民にとって複雑な外交問題はなかなか理解しがたいものであります。しかし、総理の所信で高らかに述べられました、「国民の生命、財産を守るのは政治の崇高な使命です。」、これはまさにそのとおりであります。改めて、この国会においても、その御決意を聞かせていただきたく思います。
 また、最近、国交正常化交渉妥結の前に日本が北朝鮮を国家承認するという話も出てきております。この件についても、あわせて総理の御見解をお聞きしておきたいと思います。代表質問に立つ鴻池よしただ(後ろは森総理)
 外交問題に関して国民の不安はまだまだあります。
 九月初め、ロシアのプーチン大統領が来日し、三回にわたり総理と会談しましたが、領土問題の解決は見通しが困難、加えて、先日発覚したスパイ事件で、対ロシア方針が今までどおりでよいのか、もう一度考え直していただかなければならないのではないかと思うのであります。スパイを送り、領土問題を先送りして、その上で我が国の経済支援をできるだけ引き出そうとする、そんなロシアに対する不信感は募るばかりであります。
 いずれ総理はロシア訪問を予定されていると伺いますが、今後どのような対ロシア外交をもって挑まれるのか、お伺いしたいと思います。
 国民の不安は北朝鮮あるいはロシアの外交問題だけではありません。それは、金融危機に始まった大不況。景気に改善の兆しが見えるというのは情報技術関連の企業が中心で、相変わらず、既に立ち直っているはずの金融機関の貸し渋り、金融庁の検査マニュアルの建前を並べ立てての取り立てのあおりで、中小企業の倒産件数はいまだ高い現状であります。
 御存じのとおり、日本の企業の99.7%が中小企業です。働く人々の72.7%が中小企業で働いているのであります。すなわち、日本の経済をここまで支えてきたのは紛れもなく中小企業の活力であり、そこに働く人々の努力のたまものであることを忘れてはなりません。
 総理、中小企業のやる気を引き出せるかどうか、日本経済の再生のかぎであると言っても過言ではありません。何百億、何千億という驚くような借金をして多額の負債を出していても、有名な大企業には助け船が出ますけれども、汗まみれ泥まみれの中小企業には寄りつくところもない、波に漂う小舟のような存在だということを総理に御承知いただきたいと思うわけであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 ここであえて強調したいのは、中小企業対策事業の国家予算が1900億円では余りにも少ないということであります。
 例えば、ODAの事業予算は一兆五千億円台で、国内中小企業支援の8倍の金が海外の経済協力に使われているのであります。例えば、中国に対して毎年2000億円以上、すなわち日本の中小企業に対する予算と同額の経済協力が行われているのであります。そして、中国からは繊維雑貨、そして大変な超割安の多くの製品が輸入されて日本の中小企業の経営が大きく圧迫されている事実に、多くの中小企業のおやじやそこで働く人々は何でやねんと割り切れない気持ちでいっぱいであります。
 総理、中小企業に元気を出させる対策について、ぜひお考えをお聞きしたいと思います。
 さらに、中国についてつけ加えて申し上げたい。 中国は、過去12年連続で対前年度比10%以上の軍事費の増加をしております。さらに、中国から発展途上国、中国から発展途上国十五カ国に毎年600億円の援助をしているそうです。私は、この国に対してのODAのあり方を再検討すべきだと考えますが、いかがですか。
 中国は、250万人の世界最大の軍隊を擁し、軍事費は国家予算の10%以上を占めています。また、日本を含むアジア地域を射程にしたミサイルは約70基保有、さらにロシアから戦闘機の購入も行っている国であります。
 話は変わりますが、カンボジアのフン・セン首相は、タケオ州国道2号線の一部の補修工事が日本政府の援助で完了すれば、この区間を小渕ロードと名づけると述べております。その理由は、日本の援助が内戦後のカンボジア復興に大きく貢献していることや、1990年代初めにPKOに参加した日本の自衛隊の拠点がタケオ州にあったことを挙げております。我が国からの援助が有効に使われ、そして相手国の人々に喜ばれてこそ、日本に対する評価も高まり、我が国の国益にもつながるのであります。
 昨年9月、日本の経済援助もあって北京に地下鉄2号線が開通しました。建設費900億円のうち200億円が日本からODAで賄われております。こうしたインフラ整備事業に対して日本が援助をしているということを中国の人たちはほとんど知らないのではないでしょうか。森サブウエーと名づけてもらったらどうでしょうか。
 そもそも開発援助とは、大綱の前文に書かれているように、飢餓や貧困に苦しむ開発途上国の人々を看過できないというのが原点のはずであります。果たして中国がODAの対象となる貧困発展開発途上国に当たるのでしょうか。また、閣議決定であるODA大綱をどれほど重く受けとめておられるのか、総理の御意見をお聞きしたいと思います。
 国民に今ある不安感は、外交問題や景気の問題だけではありません。戦後の高度経済成長路線を推進してきたのが自民党単独政権であったことは周知の事実であります。その経済至上主義路線の行き着いた先がバブル経済であり、バブルの崩壊の平成不況であります。そして、その間に日本人の精神の荒廃が進み、日本の社会の混迷の度合いを深めているのが現実であります。
 今回の総選挙の結果、自民党は特に大都市の有権者からそっぽを向かれてしまいました。公共事業など税金の配分が地方に偏重していることの反発もあるかと思いますけれども、それよりも都市に暮らす住民が戦後50年を経た「この国のかたち」に大きな疑問を持っているからではないかと感じるのであります。
 国民の中に閉塞感、焦燥感、これが募っているような気がしてなりません。この閉塞感、焦燥感、そして何げない不安が、日本人のアイデンティティーの喪失の問題や教育崩壊の問題と、そして政治不信に底流で結びついているのではないかと私は思いますけれども、総理はいかがお考えでしょうか。
 都会に住む多くの人々は、お正月やお盆にはふるさとに帰り、先祖のお墓へお参りして、親兄弟とひとときの出会いを楽しみます。ふるさとの懐かしい風景、これに加えて、人の余り入ってこない立派なホールや美術館、車がほとんど通らない立派な高速道路、その道路の標識にはイノシシに注意とかシカに注意と。過密と過疎の対策は、結局はできていなかったのであります。
 そして、ふるさとから都会の我が家に帰れば、狭い部屋、隣の家の声が聞こえる。空気が汚い。車が渋滞で動かない。電車は超満員。会社に行けばリストラにおびえる。家に帰れば茶髪の息子。親がぼけたらどうしよう。その前におれが倒れたらどうしよう。まさに焦燥感と不安、これが政治不信につながり、政権政党への不信につながり、都市に住む人々が静かに無党派に移動していることに総理はお気づきになっていらっしゃるでしょうか。
 国民の何げない不安、それを解決していくのが政治の目的であります。政治の安定は経済の安定、経済の安定は社会の安定につながります。少なくともそれぞれの解決策やその方向を示していくのが政権政党のトップリーダーの使命であると思いますが、総理の御意見を伺いたいと思います。
 しかし、何よりも急がなくてならないのが、国民の政治家に対する不信、政治に対する不信ではありません、政治家に対する不信にどう対処するかであります。
 大変残念なことに、最近、中尾元建設大臣の汚職事件や、民主党の山本譲司前衆議院議員の詐欺事件が発生しました。今や政界の腐敗防止を徹底して国民の前に明らかにしなければなりません。政治家の倫理の確立は当たり前のことでありますけれども、あっせん利得の防止のため、実効性のある立法を早期に図らなければなりません。信頼関係が国民と政治家との間になくなれば国家の危機につながります。総理、信なくば立たず、これをしっかり実行しようではありませんか。
 総理に率直な御意見を承りたいと思います。
 戦後、我が国は、戦前の教育の行き過ぎた反省から、戦前は悪、戦後は善と、間違った思いが今日まで蔓延をしております。精神的な価値観よりも物質的な価値、社会的責任よりも個人の権利が優先するという風潮、親や教師や地域社会の子供たちへの影響力が著しく低下しました。そして、凶悪な暴力事件や学校でのいじめ等が毎日のように頻発する極めて深刻で危機的な状況に至っております。
 総理は、所信表明演説の中で、「二十一世紀の日本を支える子供たちが、創造性豊かな立派な人間として成長することこそが、心の豊かな美しい国家」と述べられました。私は大いに共感します。まさに教育は百年の大計であり、教育は国政の重要事項であると思います。
 教育改革国民会議は、去る22日、森総理へ中間報告を提出いたしました。それによりますと、教育基本法改正の必要性、集団生活による奉仕活動の義務化、道徳教育を初め学校教育の場や高校、大学での創造性を重視、なるほどとうなずけるものも多くあります。しかし、重要なことが欠けていると思うのです。森総理が指摘する、命を大切にする、他人を思いやる、それが今最も欠けているのは大人の方ではないでしょうか。
 日本文化や伝統文化を大切にしてこなかったのも大人であります。国家や地域を愛する気持ちをほとんど持ち合わせていないのも今の大人であります。倫理観や正義感の乏しい政治家や官僚、そして無責任な医療ミスや薬害、すべて大人のなせるわざであります。教育改革の必要性を声高に言う前に、子供に何かを教える前に、大人がみずからの行動を反省することが中間報告には書かれていないのではありませんか。
 みずからを律することのできない大人が教える道徳を子供たちが受け入れてくれますか。子供たちが信ずるのは、口先や文章の道徳ではなく、大人が実践することによって示す道徳ではないでしょうか。今も昔も子供は親の背を見て育ちます。親の責任は重大であるという自覚から教育改革は始まると思います。一番大事なことだと思いますが、総理、どうでしょう。
 大人社会の反省の上に立って二十一世紀の教育のあるべき姿を示さなくてはならないと思いますが、これに対する総理の御所見を承りたいと思います。 次に、ぜひともお考えいただきたいのは、命を大切にする、他人を思いやる、その根底にあるのは宗教観ではないかと思うのであります。
 戦前の教育への間違った反省から、戦後、宗教についての教育が置き去りにされました。日本は、古代から神道や仏教、儒教、さらにはキリスト教、そして武士道に至るそれぞれの宗教や哲学を正確に受けとめてまいりました。やおよろずの神や仏をあがめ、それを上手にみずからの人生の座右に置いて人間のあるべき道を求めてきたのであります。
 学校教育の中にあって、宗教について、先人の哲学について深く考察する時間も大変必要なことではないかと思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。
 次に、新しい国のイメージを示さなくては教育改革を確たるものにすることにはならないと思います。所信を伺っておりますと、大変失礼ではありますが、新しい国家の姿はITが発達した国があるべき姿のように聞こえてなりません。ITはあくまで技術革新のプロセスであり、新しい価値観を示すものではないと私は思います。新しい価値観をなくして新しい教育は構築できません。その目的もあいまいになると思います。
 人には人柄、家には家柄、国には国柄があるわけであります。日本の国柄について、日本の国柄のイメージについて、総理、国民に伝えていただきたいと思います。
 さて、参議院選挙はあと十カ月後に迫りました。国民が今参議院にどのような役割を期待しているのか、我々は二院制の原点に立ち返って真摯に受けとめ、選挙制度の改革に真剣に取り組むときであります。 六年間の議員任期のある参議院は、長期的視点で個々の議員の見識を発揮し、憲法のあり方を初め、教育、外交、防衛等の基本問題に腰を据えて取り組むべきであります。
 このために、高い見識を持つ人材を広く求める比例代表選挙は重要であります。しかし、今の制度では、政党があらかじめ候補者の当選順位を決定し、さらに政党名の投票になるために、有権者にとっては候補者の顔の見えない選挙になっており、名簿の順位づけもわかりにくいものになっております。選挙自体の活力も減少します。
 そこで、与党三党が鋭意検討した結果、政党が候補者を順位づけるのをやめて、国民に名前を書いて選んでいただく新たな非拘束名簿方式の導入を図ることにいたしました。
 この選挙制度の改革はここ十数年来検討されてきたものであり、よりよく民意を反映する選挙制度へ改革しようとするものであります。せっかく特別委員会もできました。ぜひとも野党諸君の参加、御議論を心待ちいたしております。相撲は土俵の上でとるものでありまして、土俵の下でしこばっかり踏んでおっては相撲になりません。
 また、前国会から野党諸君の反対のために懸案になっている定数十名削減については、公務員定数の大幅削減や民間もリストラを進めておられる中、政治家みずからも痛みを分かち合うため、選挙制度の改革とあわせて定数削減を行おうとするものであります。国民の皆様に理解を深めていただけるよう努力をしたいと思っております。
 さて、来年夏は参議院選挙です。政治がみずから改革する転機でもあります。しかも、国づくりの基本、この国のかたちと心、そして憲法について各党がどのように考えるのか明確にして、それを争点にして選挙戦を戦おうではありませんか。自衛隊は憲法違反だけれども、大変なときにはぜひとも出動してほしい、しかし、段階的に自衛隊はなくすんだ、天皇制をなくすんだ、日米安保をなくすんだという共産党さんの御意見も選挙戦でしっかりと聞かせていただいて戦いをさせていただきたいと思っております。
 さて、参議院選挙の非拘束の導入について、また憲法改正の論点の明確化について総理の所見を承りたいと思います。
 この臨時国会は七十二日間の短期間であります。しかし、重要法案がメジロ押しであります。与党三党は二十世紀最後の国会の重要性を十分自覚し、補正予算初め重要法案の成立に向けて一致団結して森内閣を支える決意であります。総理におかれましては、国家国民のために、現世を忘れぬ久遠の理想に向けて、堂々と大いなるリーダーシップを発揮されんことをお願いいたします。
 最後に、オリンピックの中継を中断してこの国会中継にチャンネルを変えていただきました国民の皆様方に心から敬意を表しまして、私の代表質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)

 

○国務大臣(森喜朗君) 

今後の災害復旧・復興への取り組みについてのお尋ねがございました。
 三宅島、神津島及び新島の災害につきましては、九月十四日に、扇国土庁長官兼建設大臣、公明党の神崎代表とともにその状況を視察し、現地の御要望をお伺いしてまいりました。
 被災者の方々が通常の生活へ一日も早く復帰できますように、現地で賜りました要望や課題に対して政府一体となって早急に対応を行う必要があります。
 このため、九月十九日に決定した百七十九億円の公共事業等予備費の使用などにより早期の復旧・復興に努めるとともに、火山活動の監視の強化、避難されている方々の生活支援などに対し、実施可能なものについてはすべて措置するという観点から引き続き万全を期してまいります。
 被災者住宅再建支援制度についてでありますが、住宅再建支援のあり方については、被災者生活再建支援法の附則第二条に「総合的な見地から検討を行う」ことと規定されております。これに基づきまして、平成十一年一月に国土庁に被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会を設置し、被災地方公共団体の経験も踏まえつつ今議論をいたしているところであります。
 今後、国土庁の検討委員会の報告、その他さまざまな御意見を総合的に勘案しつつ、住宅再建支援のあり方について検討してまいる所存であります。
 シドニー・オリンピックについてのお尋ねがありました。
 日本選手団は既に前回のアトランタ大会を上回る五個の金メダルを獲得するなど、連日すばらしい活躍をしておられます。私は、メダルもすばらしいことだし、入賞も大変感激的でありますが、むしろ可能性を求めて、このオリンピックに参加する標準記録をどう超えるか、その参加者資格を求めて努力をされた選手の皆さんに私は心から敬意を表したいと思います。
 日ごろの厳しい鍛錬に耐え、オリンピックという華々しい舞台において勝利に向けての全力を尽くす選手たちの姿は、私を初めとして国民すべてに大きな感動を呼び起こすとともに、次代を担う青少年に希望と活力を与えるものであり、私も改めてスポーツのすばらしさを実感しているところであります。
 今後のスポーツ振興に対する考え方についてのお尋ねでありましたが、スポーツは心も体も強い青少年を育てるため教育面において大きな役割を果たすとともに、明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に寄与するものであります。全国津々浦々で子供からお年寄りまでみんながスポーツを楽しむことができ、また夢や感動を与えてくれる世界的な競技者を育成できるよう、地域や学校等における豊かなスポーツ環境の整備に最大限の努力を傾けてまいります。
 拉致容疑問題についてのお尋ねですが、政府としては、我が国国民の生命と安全にかかわる重要な問題であると認識いたしており、先般の日朝国交正常化交渉第十回本会談においても、この問題は国交正常化のためには避けて通れないことを先方に説
明いたしました。また、私自身、このような考えを先般、被害者御家族の方々にも直接お話をいたしました。
 今後も、国交正常化交渉その他の日朝間の対話の場で、この問題の解決に向けて
粘り強く取り組んでいく方針であります。 北朝鮮の国家承認についてのお尋ねですが、政府としては、日朝国交正常化交渉の
プロセスの中で、諸般の事情を考慮しつつ検討されるべき課題と考えます。 他方、正常化交渉は本年四月に約七年半ぶりに再開されたばかりであり、まだ本格的な議論に入っておらず、北朝鮮の国家承認について特定の方針を固めたという事実はございません。
 今後の対ロ外交でありますが、政府としては、政治、経済等あらゆる分野で日ロ関係を強化しつつ、四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するという方針を引き続き堅持してまいります。
 このような方針のもと、先般の日ロ首脳会談の成果を踏まえつつ、今後ともさまざまなレベルの話し合いを通じ、対ロ外交に精力的に取り組んでまいります。
 中小企業対策についてお尋ねでありますが、中小企業は我が国経済の牽引力であり、御指摘のように、その活力ある成長発展を図ることが我が国経済再生のかぎになると考えております。
 このため、まず、中小企業をめぐる金融情勢がいまだ厳しい中で、特別保証制度の期限が来年の三月に到来することを踏まえ、一般保証制度の拡充や大型倒産、災害等のセーフティーネットに係る対策など、十分な対策を実施したいと考えております。
 また、IT時代の到来による経営環境の変化に中小企業が対応できますように、情報提供、研修の実施等、中小企業の多様なニーズに対応したきめ細やかな対策を講じてまいります。
 我が国の対中ODAについてお尋ねでありましたが、中国では依然として一日一米ドル以下の生活を送る人々が二億人以上に及ぶ等、貧困や経済格差といったさまざまな開発上の問題を抱えています。
 こうした中国が改革・開放政策のもとで安定と発展を確保し、そのような中国との間に安定した協力関係を発展させることは、アジア太平洋及び世界の平和と安定、さらには我が国自身にも重要な意義を有すると考えます。我が国は、こうした観点から、ODA
大綱を踏まえ、中国の援助需要、経済社会状況、我が国との二国間関係を総合的な判断の上に対中経済協力を実施しております。
 また、政府としては、今後の対中ODAのあり方については、国内にさまざまな御意見があることを踏まえ、我が国の各界の有識者からの意見も聴取しつつ、中国に対して国別援助計画を策定するための作業を進めているところであります。
 国民の不安に対する政治の役割に関しての御質問がありました。 近年の厳しい環境変化により、戦後の我が国の驚異的な発展を支えてきたシステムや物の考え方の多くが時代に適合しなくなっていることは事実であります。こうした中で、国民が、家族のこと、仕事のこと、将来のことなど、生活の中でさまざまな不安を抱えていることは御指摘のとおりであると思います。私は、こうした国民の不安を解消し、国民が希望を持って未来に向かっていけるように努力することが、政権をお預かりした私の使命であると考えております。
 このため、私は、二十一世紀に向け、新しい日本社会を構築するためにIT戦略を柱とする経済構造改革、そして教育改革、社会保障改革等に国民の声に耳を傾けながら全力を挙げて取り組み、日本新生を実現していく決意でございます。
 あっせん利得罪の法制化など政治倫理の確立について御質問いただきました。
 政治倫理の一層の確立のためには、まず何よりも政治家一人一人の自覚が大切であると考えますが、議員御指摘のとおり、政治資金にまつわる事件が発生していることはまことに遺憾であります。
 こうした中、与党三党間において法制化に向け大変熱心に御議論をいただき、与党案としてまとめていただきました。今回提出された与党案は、構成要件、処罰対象等を熟慮され、実効性の確保に努められたものと考えておりますが、政治に対する国民の
信頼を高めるためにも、十分に御議論の上、ぜひとも今国会中に成立せられることを期待いたしております。
 政府といたしましては、各党各会派における議論の結果を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えております。
 また、法制化のほか、来年一月の中央省庁再編に合わせ、行政の公正性、公平性を図るという観点から、閣僚などの規律の策定を既に指示いたしておりまして、各党においてもこの政治倫理の問題についていろいろな面から御議論をいただきたいと考え
ております。
 教育改革についてお尋ねがありました。
 私は、かねてから、二十一世紀の日本を支える子供たちが、人間性豊かで創造性に富む立派な人間として成長することこそが重要なことと申し上げてまいりました。そのためにも、議員御指摘のとおり、我々大人がみずからの行動を反省し、大人社会全体の共同責任として、子供を取り巻く社会そのものを子供の健全な成長を支えるものへと変えていく努力が求められているものと考えております。
 教育をよくするということは、決して子供たちの問題だけで論ずるのではなくて、国民各層がよりよく生きられる仕組みをつくることであって、そのための国民的議論を進めることが重要であります。先般、教育改革国民会議から中間報告が行われ、文部省に
対し、この報告を十分に踏まえ、教育改革の準備を直ちに始めるよう指示いたしたところでありますが、今後、国民の皆さんの御意見を広くお聞きしながら教育改革を進めてまいりたいと考えております。
 また、宗教についての教育に関するお尋ねがありました。
 宗教的な情操を深める教育は大切であります。学校教育においては、児童生徒の発達段階に応じ、道徳や倫理等において、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めることや、人生における宗教の持つ意義を理解させることなどを指導することといた
しております。
 今後とも、道徳や倫理等の中で、宗教的な情操を深める教育を大切にしていきたいと考えております。
 新たな国のイメージについてお尋ねがありました。御指摘のとおり、改革をするに当たって目指すべき国家像を明確にすることは、政治の大事な役割であると考えております。
 戦後、日本は高度成長をなし遂げましたが、バブルの崩壊、その後の厳しい経済状況の中で経済構造改革が急務となっております。一方、物質的な豊かさを達成する過程で、命の尊厳、他人への思いやり、地域の文化や伝統など、いわば心の大切さが見
失いがちであったと思います。
 私は、二十一世紀には経済の活力を高めながら、同時に、物質一辺倒ではなく、家庭や地域社会の中で培われていた心の豊かさについていま一度考えることが必要であると考えております。
 そのような思いから、私はかねてから、安心して夢を持って暮らせる国家、心豊かな美しい国家、世界から信頼される国家というものを目指すべき日本の姿としてお示しをしてきました。まさに鴻池議員のおっしゃる国柄であると、私はそのように信じておりま
す。
 その際、私は、グローバル化、IT革命、少子高齢化など大きく時代が変化している中で、新しい社会にふさわしい新しい仕組みをつくる新生という発想が大切であると考え、そのための具体的な戦略として日本新生プランを提唱しているわけでございます。
 選挙制度についてのお尋ねがありました。
 どんなものでも一長一短があり、現行の拘束名簿方式は政党主体の選挙を目指すものでありますが、一方で、有権者がどの候補者を当選させたいのかという意思表示ができず、候補者の顔が見えずに選挙に対する関心が高まりにくいという問題点が指摘
されております。
 また、定数削減につきましては、公務員定数の削減、地方議会の定数削減、民間企業の経営効率化努力など、さらに先般、衆議院でも定数削減を行っております。こうした動向を踏まえ、国民の視点に立って検討することが大切であると考えます。
 いずれにせよ、参議院選挙制度改革は議会政治の根幹にかかわる重要問題であり、国民が政治に関心を持ち、また政治が国民から信頼されるような選挙制度を目指し、各党各派の間で精力的に議論していただきたいと考えております。
 来年の参議院の選挙の争点に関して御指摘がありました。
 憲法に関する問題については、衆参両院に憲法調査会が設置され、将来の我が国の基本的なあり方を見据えて、幅広く熱心な議論が行われております。
 二院制のもとでの参議院の役割は、第一に、衆議院及び内閣に対するチェックアンドバランスを発揮することにあること、第二に、異なる制度等による選挙によって国民の多元的な意見をよりよく国会に反映することにあるとされております。来る参議院選挙においては、こうした二院制の役割を踏まえて、各候補者、各政党、それぞれが目指す国のあり方や政策を国民に訴えていくことが極めて大切であると考えます。(拍手)

 

 

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